序章
また、意識が束の間の浮上を遂げる。
深い、ふかい、闇よりも深い
それは絶望と同じで、心の奥にまでこの禍々とした気配で覆ってしまいそうだ
―――――自分が一体誰で、何なのかを忘れてしまいそうだ
いや、忘れたほうが、楽なのだろう
じゃらり、と手首の枷が嘲笑うように音を立てる。
―――――忘れたほうが、楽だろう
しかし、我は、われは・・・・・
ああ。
許さぬ。
許さぬ、
我を貶め
我を縛る
人間よ
じゃらり、と首に巻きつく鎖が音を立てる
また、まただ
急速に、意識が沈む
また、繰り返す
手が届きそうで、届かない
永遠に繰り返すのだろう、
永遠に憎むのだろう
『・・・・・く・・う・・』
どこかで、声がする
甘い、それでいて心を裂くような、こえ。
しらない、知るはずもない。
我は独りで、これからもきっと独りなのだから。
だというのに、
『・・・・お・・・う・・・!!』
この声さえあれば
死んでもいいと思うのは、何故なのだろう。
ああ、まただ、
また、
―――――――意識が混濁する
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